♠理事長コラム9月号 「幸せとは?」「頑張ることとは?」♠
2020年09月02日
人生とは自分探しの旅、なりたい自分を求めての旅。その旅は、幼稚園に入園の3歳からスタートします。
西欧では昔から「8歳までは家庭の子、9歳過ぎたら社会の子」と言い伝えられています。8歳までは、両親の保護の中で、祖先から伝承されてきた人間としての生きていくアンテナをしっかりと身につけることが大切です。
8歳までは、人間としての営みの基礎基本、獣と同じように地球のサイクルの厳しい試練に沿って生きていく為の「感性と直感力と運」をあそびを通して身体に刷り込んでいく学習が大切です。
IT社会を迎えて、人間として生きるためには、弥生時代の生活から学ぶことがたくさんあります。例えば、手と足を駆使して、道具を使い、木に登り、狩猟をし、火をおこし,食べ物を貯蔵する生活の知恵を身をもって学習することが大切です。
9歳からは、宇宙時代に備えて、人間が生き抜いていく為のIT時代の学問を身につけていくことが今後の課題になってきます。
例年ですと、年長松組に進級すると、子どもたちは、健伸の森や君津亀山少年の家の自然教育に備えて、足腰を鍛え、田畠を耕作する体験学習を重ねてきています。 運動会でフラッグやチアーを演じる練習の一環として、背中にリュックを背負って鋸山にチャレンジします。汗水流して一歩一歩あの鋸山の階段を登って、頂上で歓声をあげる「あの達成感」を経験させてあげないと、日々の運動会の練習がガンバレの叱咤激励になってしまいかねません。
今年はどうするか、子どもたちのあこがれをどのように実現化していくか?
これから松組の子どもたちとの話し合いが始まります。コロナ対策を含めた上でスタッフより提案がある場合、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
「しあわせって自分できめる?」
令和の時代を迎えて、地球規模で大きな変革の曲がり角に立っていることを感じます。新しいIT時代を迎えて、時計の針がめまぐるしく回転し始めました。
昭和の時代の「がんばり」と令和の時代の「頑張る」とは質が違うのでしょうか?
今から30年前頃は、時間のベルトが緩やかに流れていたので、「頑張って」と言われて、頑張って努力すれば、「上昇のエスカレーター」に乗れた。
エスカレーターに乗って頑張れば、優れた学校に進学し、大企業に就職し、定年までの栄光の道が保障される可能性がありました。
この「上昇エスカレーター」の流れに狂いが生じ始めた30年前の週刊文春に掲載された椎名正さんのエッセイを紹介します。
「幼稚園の給食風景。Pちゃんは給食が食べられない。どうしても残してしまう。それを心配した先生は、Pチャンに「Pチャン頑張って食べるのよ」
「一つも残さずがんばろうね」「これはたべられるでしょう。これもがんばろうね」「たべるまでは あそばないでがんばろうね」と励まします。
そのうちみんなが集まってきて、「がんばれ がんばれ」と励まします。
Pちゃん だんだん だんだんなさけなくなって、たべられなくなってしまいます。「給食の時間イヤー」と言って、幼稚園を休む様になってしまいました。
椎名誠さんは「これは いじめです」と事例提起して、ガンバレのあり方が、当時、話題になりました。
このPチャン5歳としたら、30年前ですから、今35歳ぐらいの年齢です。お母さん方の幼児期です。どのようにお考えになりますか。
「ガンバレ」は、自分に言い聞かせる言葉で、英語では、you can do it♠
君ならできるという励ましなんでしょう。
「頑張ること」は、いいことだし、「ガンバレ」と声援を送ることは大切です。
人間は、頑張らなくては生きていけません。でも、「ガンバレ」の言葉も使い方次第で励ましにもなるし、強要にもなりかねません。
Sくんは算数で頑張って、自慢げによろこんでお母さんに見せた。
「おかあさん、82点がんばった」「よかったわねぇ みんなは、下は何人いるの?」
「13人しかいないの? この次は頑張って100点とろうね!」
頑張るは、自分への激励。他人に課せられる指示ではありません.。
「何ができるかというアビリティー(可能性)は、親からの授けられた遺伝子。
歩くこと、食べること、走ることの力は、親からの遺伝子。人間は自力で空を飛ぶことはできないが、泳ぐことは本人のがんばり次第でどうにかなります。
人間の脳は140億のニューロン(神経細胞)を持って生まれてきます。仕事や勉強ができるか否かは、神経回路が色濃くネットワークされているか否かです。
物事に意欲と努力を持って関わることで、神経細胞は活性化して複雑な神経回路を形成していきます。能力があるか否かは、脳の大きさや重さでは無く、神経回路のネットワークが充実しているか否かで決まるようです。
「頭の善し悪しは意欲とがんばりしだい」ということにもなります。
繰り返し繰り返し「意欲」をもってチャレンジすることで、脳の神経回路は絡み合い活性化するのです。そのためにも、物が豊かで願い事が自由に適えられる恵まれすぎる生活環境であれば、人間の脳は活性化しないでしょう。
そうした意味では、時にはシンプルに絞り120%の目標を設定して、友だちと競い合って、何度もチャレンジし、頑張ってクリアーすることで、脳は「ヤッターという達成感」で活性化していくかもしれません。
脳の活性化のためには、チャレンジして成功する喜びを実感する機会が必要です。
私たちは、年長松組に進級すると、一人ひとりの子どもが自分の特性を発揮して目標に向かって頑張る「夢チャレンジ」をカリキュラムの課題としています。
今年お亡くなりになった外山滋比古教授から直接「人間の幸せは、亡くなるとき、おかげさまで 自分の人生は「幸せだったなぁ」と自分で満足できれば幸せである」と直接お聞きしたことがあります。
自分の生き方は自分で責任を持ち、自分に誇りを持ち、自分でがんばって、明日への生活の喜びを高める努力をすることが、最高の幸せなのかもしれません。
これから自然界は、葉を落とす秋を迎えます。春に向かって、木々の枝は硬い新芽の芽を包むために葉を落としはじめました。子どもたちの成長も同じです。
これから年長松組さんは3月の卒園に向けての新しい芽「友だちとの関わり」を通して自分の位置を確認していく心が深まる時期を迎えます。
ご理解ご協力のほどよろしくお願い申し上げます