♠11月号 ウサギとカメ こんな子どもを育てたい  ♠

2019年10月26日

理事長コラム

「ウサギは、カメといっしょにゴールしようとおもって、カメがくるまでやすんでいたら、ねむちゃったんだ」
「ウサギさんが、まっていてくれたんだから、カメさんもだまっておいこしていかないで、いっしょにやすめば よかったのに・・・」
「ねているウサギをみて、カメさんは よろこんだよね」
「でも、こえもかけないで さきににいっちゃって やさしくないね」
「もしかしたら、かめは ウサギがねているのを しらなかったんだよ」
「うさぎも ねたふりをしていたんじゃない?」
「へぇ どうしてねたふりしていたの?」
柿を描きながら、子どもたちと「ウサギとカメ」の話ではずみました。子どもが絵を描くということは、心の窓を広げることです。
子どもたちもお話ししながら絵を描くと、アニメの世界のように、筋書きのない思いつき話が動画になって動き出すようなことがあります。
ささやけば、指先でさすれば、物事が実現するアラビアンナイトの世界のような文化生活。便利になった反面、日常の生活スタイルも変わり、家族一緒に語り合ったり報告をしたりする「お話の時間」が少なくなって、家庭も交わりの欠けるスクランブル交差点なりそうですね。
家族団らん。一緒に食卓を囲み会話を交わした「心豊かな時間」が消えていくような気がします。
働き方改革で時間的なゆとりが出てきたはずなのに・・・お父さんがお休みの時には、お母さんが働きに出たりする。
家庭が空洞化してしまう傾向が見られたりしますね。
「太陽が昇って仕事が始まり、日が落ちると一日の生活が終わる」という太陽中心の農業時代から、24時間オープンの商業時代になると、スタートもゴールもバラバラのスクランブル生活になりかねません。
そうした時代の流れの中で、亀のようにコツコツがんばり型の生き方が否定され、仕事と休憩を使い分けるインタバル型のウサギの生き方が肯定されるようになるのでしょうね。
図鑑を開くと、実際の亀は、冬の寒い時期は甲羅の中に養分を蓄え閉じこもり冬眠するそうですから、年次有給休暇が保障されているようなものです。
ところが、身を守る武器を持たないウサギは、絶えず天敵の襲来に怯えて、アンテナを高くしてびくびくとしているのでしょう。ですから、安全な場所で昼寝をするぐらいの安らぎ休憩タイムをウサギに保障してあげたいものですね。
子どもたちに「うさぎさんは ねたふりしているって ほんとう?」と問われて、一瞬、ためらいながら「ウサギさんのように走るときは、全力で走り、眠るときはぐっすりねられ

たらいいなぁ」と教科書的な答えをして苦笑しています。
それにしても今回の15号台風、そして19号台風は、大自然の逆襲のような脅威を感じました。親戚・知人などで大きな災害に遭われたご家庭も多かったことと拝察します。
日本は四季の恵みをもたらしてくれる自然が宝庫です。その自然に触れる体験は子どもにとって「育ちの源」になります。私たち大人にとっても、子どもの頃の原風景の中に先祖から刷り込まれた「ふる里の原風景」のDNAが受け継がれているはずです。
したがって、自然に触れることで、子どもは目を輝かし元気になるはずです。
子どもにとって元気スポット。小石、ドロ団子、水たまり、園庭の片隅にいるダンゴムシや幼虫、、木登りドッチボール、鬼ごっこ、縄跳び、コマ回し・・・・・子どもにとっては、「自ら育つ力」の元気スポットです。
水と土と虫と植物・・どれもこれも生きるための「意欲」につながります。
以前にも紹介しましたが、国会でも話題になったヘッグマン教授の研究は、
「幼児期における質の高い教育の重要性」を次のように述べています。
「就学前に質の高い専門的な教育刺激をうけておかないと、その時期にしか発達 しない能力が発達しない。」
「就学前における能力の発達があれば、就学後における教育の効果は大きくなる。 しかし、それが無ければ、就学後の教育効果は小さくなってしまう。」
私たちは、三歳から六歳の幼児期の幼芽がやがて立派な幹になるように、各分野の専門家が編成した「質の高い教育カリキュラム」を提供することです。
「これからの人生をたくましく自信を持って生きていくための「アンテナ」を育てたいと願っています。
子どもの成長する力は、努力して獲得した成功体験による「自信」です。
「どうせぼくなんか」という口癖を「もしかしたら」ぼくでも出来るかも」という達成感の経験が、成長への一歩となります。
幼児期は達成感の学習期です。適度の成功を何度も体験しよう。何でも手にしてなんにでも好奇心を抱く。周りの物に好奇心を抱き、手元にあるものを応用して見る習慣を大切にしましょう。
都会では、心なしか雀の姿を見かけなくなりました。カタツムリもトンボも見かけませんね。ヤゴは? モンシロチョウは? バッタは? ザリガニは?
子どもは、風を切り、原っぱを走り、小川で戯れ、木に登り、泥んこになってあそぶことで、命の営みの術を身につけます。江戸も明治も昭和の時代も変わらない子どもの学習方法ですね。
地球温暖化の影響かモンスーンと台風の被害が年々増大化していきます。
10月でも35度近くの熱暑が続きました。そしてその翌週は、日本の国土を決壊させるのではないかと心配させられた最大級の台風の襲来でした。
そして日が斜めに差して、気温が冷え込む・・・秋の訪れです。
風の色もオレンジから白っぽくなり11月。自然界は今から冬支度を迎えます。