11月号♣夏が過ぎて、秋模様。自然はすでに冬支度♣
2018年11月01日
子どもたちと えのぐを使って絵を描いた。
「何を描いたの? 水槽で元気に泳ぐ金魚」子どもたちは、優雅に泳ぐ金魚を目で追い、さっさと鉛筆でデッサンをする。すばやくチューブからパレットにしぼり出したえのぐをたっぷりと太筆につけて大胆に泳ぐ金魚に色づけをする。
描かれる金魚も幸せそう。描く子どもたちも幸せそう。そして見守る先生たちも幸せそうで・・・私もほのぼのとしました。
「金魚は、夏だから・・秋の果物?・・・そうだ。柿を描いてみない?」
「いいよ」と子どもたちは植木屋さんが切ってくれた園庭の枝付きの柿の実を描き始めました。
絵は心が躍らなければ、色も形も縮んでしまいます。楽しい一日でした。
森や畑のある自然の中で、子どもが、心も身体も弾ませて生活する
「自然と共生する環境つくり」を追求してきた「健伸kidsプロジェクト」が、高く評価されて、公益財団法人日本デザイン振興会主催の審査会で「2018年グッドデザイン賞」を受賞しました。
日曜日まで東京六本木ミッドタウンで公開されています。
学院創立以来、地域の片隅で地道に実践を積み重ねてきた健伸学院の野外教育の実践が、高く評価されたことに喜びを感じます。
夏休み、土・日祝日を返上してこのプロジェクトを推進してきたメンバー、そしてこの企画作りに努力した草野裕之教諭、戸井田あけみ教諭、柴田茂樹教諭に「あっぱれ」と拍手を送りたいと思います。
森の中での生活を通して、電気もガスも無い生活を子どもたちが、「不便だと感じる」ことから新たなる発想が広がる。そこから、ことを進めていく教育の実践が評価された喜びです。
審査委員の評価コメント
【小学生を対象とした休暇期間のプログラム。野外活動と共に学習が行われている。独自の環境を整備しつつ、課外授業としての展開は国連ESD教育にも似た独自性がある。
自然環境教育を推進する世界の動きがある中、長く続き継続されている活動に先進性を見た。今後、野外教育がここから発信されるような取り組みになっていくとますます期待できる。】
オランダやドイツで普及している自然と共生する「森の幼稚園」運動に魅せられて、10年程前に鎌ヶ谷市の軽井沢にある雑木林6000㎡を譲っていただきました。常緑樹を切って落葉樹だけの「健伸の森」がスタート。時間と手間をかけて手作りであそびの環境を整備。穴を掘ったり、ツリーハウス、ハンモック、煉瓦を積んで大きな釜戸等を設置。子どもたちの目線にたった野外施設づくりに励みました。
平日は、年長組が、水筒持参で園バスに乗ってあそんできます。
土・日・祝日は、小学生の野外教室が中心。夏休み等の長期休みには、自然をフィールドとしたテント生活等の野外学習を展開します。
この森は、子ども目線であそべる落葉樹の林です。子どもたちは、この森に一度でも出かけると、森の魅力にとりつかれるようです。森でのあそびが広がって、ゴムまりのように心が弾む感じがするようです。
土・日曜日や祝日、夏休みや休日の「森の生活プラン」が、下記のキャッチフレーズで呼びかけると、申し込みが殺到します。
いま 君たちは
なにをやりたいか かんがえてみよう
そして、汗を流して、夢中になって
土と とり組んでみよう。
今、小学生の放課後ルームの増設が緊急課題になっています。通常の放課後ルームは、親の都合や意向が先行した学校の空き教室を利用する閉鎖的なイメージがあります。
私たち大人も子どもも、森の中という非日常的な自然の中で虫探しをしたり、炊飯活動や畑仕事、そして自由に過ごせる時間・・・ハンモックで読書したり、木登りをしたりして過ごす野外体験学習が中心です。
kidsプログラムでは、昼食時には、自分たちで育てた野菜を収穫して、自家製の味噌でみそ汁をつくる。そして、薪をくべた大きな釜で炊きあげた米飯で、それぞれ、自分好みのおにぎりをにぎって食べる。
おむすびの大きさ、握り加減・・このほどほどの感覚がわからない子が多い。森の教室は、自分に適したほどほどの感覚、そして直感力に欠けることを実感することからスタートする。メンバーは、5年生程度が頂点で、卒業していく。高校生や大学生になってボランティアで手伝ってくれる子も多い。
子どもたちは森の活動を通して、農家の人と同じように風を通して季節を感じる。雨を感じ、時には、激しい雷の恐怖を感じたりする。
時計もない、テレビもない、スマフォもない、ゲームもない・・・森の活動を通して「自分の位置調整力」を学習していく。快適に過ごせるための薪割りのコツ、ノコギリの引き加減、にぎりめしの握り加減等を学習することで、友だちとの距離感覚が理解できるようにもなる。西の空を見て、風向きや雲の形や色で天候を読み取ることも農家のおじいさんから学んだりする。
夏の天候で木に実る「実物」、地中に実る「根物」の収穫のできの善し悪しを学んだりする。ドラム缶風呂の湯加減、火加減・・・薪の割方、手漕ぎ井戸のリズムのとり方・・・森の生活は、子どもに人間の知恵である「道具の使い方」「道具の作り方」を教えてくれる。
私たちは、カーナビに頼ることによって、方角と地図が読めなくなりました。
親指と小指が向かい合ってものをつかみ道具を巧みに駆使できるように「人間に与えられた道具を使う知恵と能力」を失い欠けています。この能力を失い考え工夫する能力を鍛えないと、人間らしさが失われていく気がしますね。