11月号 ♣子ども輝け まどみちお の世界 ♣

2016年11月01日

理事長コラム

 子ども輝け まどみちお の世界

幸せを分かち合う心の芽生え

「ぞうさん」
ぞうさん ぞうさん
おはなが ながいのね
そうよ かあさんもながいのよ

ぞうさん ぞうさん
だあれが すきなの
あのね  かあさんが すきなのよ
(まど みちお)

「おはなが 長いのね」と悪口を言われたときに、しょげたり腹を立てたりする代わりに、                   「かあさんも長いのよ。」と誇りをもって子どもの象は答える。
まどさんの研究者である坂田寛夫さんは、「子どもの象は、象として生かされていることが、                  すばらしいと思っているから悪口を言われても平気です。」
「まどさんは、象に生まれてうれしい象の歌、と思われたがっている。」と述べていることを授業で学生に伝えたことがあります。
「へぇ 象をいじめた歌なんですか」
学生は、「そんな深い意味があるとは考えていなかった。」と驚きます。
阪田さんは、「目の色が違っても髪の色が違っても仲良くしよう」から、「目の色がちがうから、肌の色がちがうから、それぞれがすばらしい。」と、 まどさんは思われたいのではないか。」と紹介しています。

   「くまさん」
はるが きて  めが さめて
くまさん ぼんやりかんがえた。
さいているのは たんぽぽだが ええっと
ぼくは だれだっけ だれだっけ

     はるが きて  めがさめて
くまさん ぼんやり かわに きた
みずに うつった いいかお みて
そうだ ぼくは くまだった
よかったな

                  (まど みちお)

満5歳から7歳の時期に、自分という存在を考えるようになります。
そして、なりたい自分像をイメージしていくようになります。
身近な私たち大人の生き方が、子どもの心に影響を与えます。
私は小学校の頃、金持ちの家の子に生まれた夢をみて、目が覚めて、がっかりしたり、ほっとしたりした経験があります。
ですから、この「そうだ ぼくは くまだった よかったな」の気持ちが良くわかります。
それぞれの子どもが、自分に誇りを持って生きていけること、もって生まれてきた子どもの特性を大切に育てていけること、が大切ですね。年長さんは、卒園まで後、数ヶ月です。
友だちとの関わりを通して、具体的に自信と誇りを身につけてたくましく生活する力が身につく大切な時期ですね。
なにごとも、子どもらしくチャレンジして、空に向かって叫ぶ、

「ぼく せかいのヘソだよう
せかいは きょうも
いい おてんきだよう、」

(まど みちお)

満2歳から3歳の子どもは、この「ぼくは世界のへそだよう」と、自分中心に生活できる ねんれいです。小さな山、トンネル、砂場のお団子、ダンゴムシ・・・    年少さんは、丸いモノが大好きです。

 ぼくが ここにいるとき
ほかの どんなものも
ぼくにかさなって
ここにいることは できない

(まど みちお)

向かい合ってお団子を作っている時でも、仲良くお話をしている時でも、年少さんは、自分だけの自分中心の世界なのです。
この「自我の芽」が、やがて、「生きる力の軸」となって支えてくれる力になるのです。
4歳のお誕生を迎える頃には、「自我の芽」は触手を伸ばし四方八方に広がります。          友だちの心に自分を映せるようになると、分かち合う思いやりの心を学習していきます。           この時期の友だちと関わる遊びの経験が、「幸運をつかむ力」となります。

 「さかな」
さかなやさんが さかなを うっているのを
さかなは しらない
にんげんが みんな さかなを たべているのを
さかなは しらない
うみの さかなも かわの さかなも
みんな しらない

(まど みちお)

 まどさんは魚が好物。毎日食卓に出る焼き魚や煮魚と向き合っているうちに魚の目が気になり、魚がいとおしくなっていきます。 魚にも人間と同じような心があるように感じて、形ある魚よりも「かまぼこ」を 食するようになったそうです。
満5歳のお誕生日を迎える頃から、子どもは、周辺の物や人を距離を置いて見られる心が育っていきます。

 にじ にじ にじ
ママ あの ちょうど したにすわって
あかちゃんに
おっぱい あげて

                    (まど みちお)

大好きなママのおっぱい、お姉ちゃんになったわたしは、目に見えない、バスの窓越しに運転手や乗客も想像して描けるようにもなります。
自分の心が充足すると人に分かち合える気持ちが育ってきます。まどさんの世界はいつも純粋で、透き通っています。 空気も透き通る秋。みんな幸せを胸深く吸い込みましょう。

幸せをたっぷり味わった子は、その幸せを共有してわけてあげることができる気持ちが芽生えます。