3月コラム 『手のひらに のせて のびのびと育てる』

2015年03月03日

理事長コラム

手のひらに のせて のびのびと育てる

暦は、三月になりました。なんとなく日差しも柔らかく感じます。

貯水池公園を二周する朝のウォーキング。

三月四日、この公園で卒園する松組さんのマラソン大会が行われます。

広々とした芝生のなだらかな坂を上ったり下ったりクロスカントリーコースを走る子どもたち・・。

昨夜来の雨で水かさが増していましたが、ふっくらとつぼみを膨らませた河津桜が一輪つぼみを開いていました。

「さぁー春ですよ。」

ホールから卒園式で歌う元気のよい年長さんの歌声が聞こえてきます。

この子どもたちとの幼稚園生活を指折り数えてみる…九日、十日。

三月は、慌しく時間が過ぎていく。特に、年長組の担任は、小学校に送付する卒園生一人一人の生活記録に追われます。

それでも、子どもと遊ぶ時間は最優先、園庭に出てドッチボール、鬼ごっこ、サッカー、縄跳び・・・

一つ一つが卒園までの思い出づくり。

背丈も伸び、お話も広がって話題も豊かになりました。昼食後のトランプ、カルタ…

お部屋でのゲーム遊びも手加減どころか真剣にやっても、負けてしまいます。

私の年齢になると、この頃の年長さんに勝るものがほとんどなくなってしまいました。

言葉、まなざし、しぐさ・・・さりげない子ども同士の会話にも、目をみはり、驚き・・まぶしく感じます。

「おおきくなったね。」

巣立つ子の後ろ姿に、嬉しくもあり、寂しくも感じる「思い出ページ」に刻み込まれる毎日です。

先日、卒園式を迎える年長さんと話をした。

「卒園式は、君たちが自分で自分をほめるお祝いです。お父さんやお母さんに、こんなに立派に育ちましたと感謝する日です。

幼稚園でであったお友だちと握手をして、お互いに「よくやった。」「ありがとう。」

と握手をしてほめあい感謝する日です。

「自分で自分をほめなさい。」そして先生たちに、「幼稚園楽しかったよ。」といってくれたら、

先生の思い出ページは涙でぬれちゃうだろうな。

卒園式には、園長先生から「すてきな幼稚園生活ができました。」と一人ひとりに「卒園証書」を渡します。

「自分で自分をほめられる人は、小学校の四年生頃になると、竹のようにぐーんとのびます。

中学校の二年生頃になると、その竹の節がもっと、もっと強く太くなって立派な竹になります。」

次の日、ホールの入り口で質問を受けました。

「なぜ、竹なの?」

「四年生と中学二年生って?」

「幼稚園の頃に、自分で目標を決めて、自分で努力していっぱい遊んだ子どもは、自分で工夫して勉強をするようになる。

運動したり、何かにチャレンジしていると、小学校の四年生と中学二年になる頃に、急に背丈が身体が大き

くなったり、走るのが速くなったり、物覚えのコツがわかって、成績が急に上がったりするんだ。

なぜか、竹のように、人間の心も身体も、大きくなるために脱皮するんだ。」

「そうかぁーわかった。たけの ふしだね。」難しい話にもかかわらず、子どもたちは、耳を傾けてくれました。

だいぶ以前のことですが、卒園生が高校受験に合格して保護者の方とご挨拶にいらっしゃいました。

「この子は、幼稚園の頃から、意欲がなく、生活習慣も身につかずでした。

でも、四年の秋、作文で賞をいただいて意欲的になりました。」

就職して関西に配属になった卒園生が

「中学二年の冬、ディケンズの短編を読んでから、原書で読んでみたいと思って英語塾に通った。

宇宙のことに興味がでて、学校の図書館に通った。文系だったのが、大学は理科系で仕事も科学研究所に

勤務することになった。そういえば、幼稚園の頃、部屋でお団子あそびをして、先生を困らせた記憶がある。」

幼稚園の頃、どろんこになって身体で刷り込んだ学習は、その後の成長のためのエネルギーになるのでしょう。

学校の教科書を思い出してください。

小学校一年生から三年生までは、国語も算数も基礎学習で「記憶と学習量」で成績が左右されます。

四年生になると、考える、工夫する、創造する力・・いわゆる応用力が、重視されます。

国語では作文や詩や俳句、算数では、「鶴亀算」「植木算」・・・知恵で解く問題が入ってきます。

この時期こそ、幼いころのあの「遊びの知恵」がエネルギー源になる。

オランダのイエナ教育協会の先生が、「子どもを手の中に包んで大切に育てる」だけでなく、

「子どもを手のひらに乗せて支えるように子どもを育てて見ましょう」と提唱している。

おむすびをむすぶように、手塩に結んで形を作るのではなく、手のひらで子どもを支えるほうが

子どもはのびのびと育つのでしょう。

古い講義ノートを整理していたら、子どもに贈る20の言葉が出てきました。

平成18年の卒園生に贈った言葉です。(中学生かな?)参考にしていただければ幸いです。

子どもたちに贈る20の願い

①冒険心にあふれる子ども、

②好奇心を持ち意欲に満ちあふれる子ども、

③ドキドキする世界を楽しむ子ども、

④いたずらをしてクスクスする子ども・・・。

⑤自分の力で考え、調べて、実行する子ども、

⑥早寝早起き、明るく元気に挨拶する子ども、

⑦約束は守る、時間を大切にする子ども、

⑧心のなかに友だちを住まわせてあげる子ども、

⑨目を見てお話を最後までしっかり聞ける子ども、

⑩素敵な出会いに感動し、チャレンジする子ども、

⑪ためらわず素直に自分を表現する子ども、

⑫夢を語り、夢を広げ、夢にチャレンジする子ども、

⑬身体で、心で感じ、心で考える子ども、

⑭人の役にたてる喜びを実感できる子ども、

⑮仲間と知恵と経験を共有してあそぶ子ども、

⑯しっかりと自分を主張して、友だちの話を聞ける子ども、

⑰自分の特技を磨き。自分を鍛える子ども、

⑱自分を大切にし、自分を好きになる子ども、

⑲自分のことをぼく、わたしと呼ぶ子ども、

⑳世界に目を向けよう。外国語をマスターしよう。

春を迎え、そして107名の卒園生を送り、今年度の教育課程も無事終了できます。

母の会をはじめ、保護者ご家庭の皆様の温かいご厚情とご協力に感謝申しあげます。