6月号 ♣両親の愛を注ぐ「子ども輝け命」♣

2017年05月17日

理事長コラム

可愛い花組さんを迎えて、まるでオーケストラの音合わせのようなにぎやかさです。やっと、オムツがとれた年齢、お母さんから離れることは大きな試練ですね。自立心が芽生える時の産声でしょう。しばらくすると、自分の位置が判るようになり、 元気にあそべるようになります。

デパートのおもちゃ売り場でひっくり返って、大声で泣いている幼児の姿をみかけます。 自分の思いが伝わらない・・・「どうして?どうして?」泣き、足をばたばたして・・・ 自分の気持ちと戦って、もだえているのでしょうね。

「かってにしなさい!」としかりつけますか?それとも、「そうよね。そうよね。」と抱きしめるほうですか?
「かってにしなさい!」と叱るばかりでは、子どもは心を閉じてしまいます。幼い子どもでも事前に説明しておく習慣をつけるといいですね。
例えば、出かける前に「今日は、アイスクリームは買わない」と説明しておくことが大切です。子どもだからこそ、事前の説明が大切なのです。

昔から、一つ二つ・五つ・・「つ」で数える年令までは、両親の愛をたっぷり刷り込んで育てることが大切といわれています。
両親の愛をたっぷり刷り込まれた子は、十歳を過ぎる頃になると、親から自立して、自分で自分をコントロールする自律心が育つといわれます。
たっぷり愛を注ぐことと過保護は異なります。過保護とは、親の一方的なお節介のことです。

「何歳から躾(しつけ)をしたらよいのか?」という質問が寄せられます。
二歳から三歳になる頃に、少しずつ根気よく繰り返して身の回りの生活の基本を身に着けられるようにいけばよいと思います。
「しつけは、子どもからの願いや思いを満たしてあげたお母さんの特権。 今度は、お母さんの希望を子どもに伝える番です。」と云われます。

躾は可愛がってあげた代償です。子どもへの愛情を注ぐことが前提です。
象をロープに縛って飼育すると、象はやがて、ロープを外してもロープの距離範囲しか行動しないという事例があります。
人間の子どもも大人の都合で躾をすると、「自分でやりたい、やろう」という自主性・主体性が育たなくなります。

まず、「やりたい」という気持ち(意欲)を大きく育てることが大切です。やる気は掛け算です。やる気がゼロなら能力が10あってもゼロです。
「やりたい意欲」をもってチャレンジしていくうちに、自分でやれることと人の手を借りなければできないことが理解できるようになり、友だちと協調する心が育っていきます。

子どもは、大人の姿を見て「やって、いいこと」と「やっては、いけないこと」「やらなくてはいけないこと」を学習していきます。
大人目線で、子どもを動物の飼育のように訓練することを「やらせ」と称します。確かに則効果的ですが、自分で自分を律する力とか、工夫し創造し、友だちから学ぶ「気づき」「意欲」が育たなくなる心配がありますね。

幼児は、二足歩行ができる一歳の誕生の頃から言葉を発するようになります。
言葉の発語と歩き回る自立・意欲とは比例します。
自分で歩けるという特権を得た赤ちゃんは、関心のあるものを求めて歩き回ります。学習のスタートですね。

「危ない!」「だめ!」とイエローカードを振りかざし、ホイッスル吹くお母さんとの鬼ごっこをしながら、子どもは育っていくのでしょうね。
母と子の鬼ごっこは、3歳のお誕生の頃まで続きます。この「母と子の戯れあそび」(ジャクリング)が、幼稚園では仲間とかかわってあそぶコミニケーション力として育っていきます。

人間の生きる力は、仲間とのコミュニケーションをはかる能力だと思います。三歳までは家庭で学び、3歳過ぎると友だちとの関わりの中で学びます。友だちからものを学べない、友だちにものを教えることができない子どもは、社会的に成熟していきません。
エリクソンは「社会に必要な道具、知識、生活体験を仲間と共有して生きていく経験を積み重ねることで人間は成熟していく。」と云います。
両親の愛をたっぷり受けて育った子どもは、時が来れば、自主的に、友だちという群れの中に入りその中で生活していくようになります。

幼稚園は、遊びを通して子ども同士が学びあう学習の場です。
子どもたちは幼稚園という集団の場で、穴の掘り方、友だちとのかかわり方、縄跳びのとび方、木の登り方、聞き方、折り紙の折り方・・・を学習していきます。
年少の花組の時は、枠の中で保育すると、一見、効率的に見えますが、子どもの自主性が、育たず「象のロープ」になりかねません。

そのためにも、健伸の教育は、三歳児の時は、できるだけ拘束しないでそれぞれの自我を発揮する場が保障される環境を大切にしています。

年中、竹組になると、「自分の姿が友だちの心にどのように映るか」が見えてきます。この頃から、仲間と共有して生活していくためのルールや基本的な生活習慣を具体的に子どもに、「気づかせ」ていく環境の基にカリキュラムを編成ています。

年長松組は、友だちと力をあわせる協働生活の中で、子ども同士学びあい、育ち合います。「子どもが子どもから学ぶ」「年長児が年少児に教え伝える」この学びの循環がとても大切です。教える子は教えることで育ちます。なわとび、木登り、コマ回し、折り紙、稲刈り・脱穀・・・、 友だちとかかわってたくましく生きる「生きる力」の教育は、この年長の頃の経験学習で培われていきます。

幼児は、全身が感覚器官です。全身の細胞の触手を張り巡らせて、環境に反応して育っていきます。子どもの育ちは環境に大きく影響を受けます。

年長さんと創立記念樹「みずき」のスケッチをしました。東北に伝承される伝統こけしの素材となる「みずき」は、この季節一日、ドラム缶何本かの水を吸い上げるといわれます。昭和47年に武藤初男さんと私と二人で植えた幼木がこんなに大きく成長しました。

子どもと一緒にスケッチした2日間みずみずしい空気を吸ったような幸せ感を味わうことが出来ました。