11月コラム『秋は、放牧されて心が育つ』~良き絵本との出会い~

2014年10月31日

理事長コラム

 

『秋は、放牧されて心が育つ』   

 ~良き絵本との出会い~

 

「種をまいた双葉が、見上げるような大木に育ちました。                                大きな樹がホテルになって、みんなが、お客さんになって泊まれたら いいなぁ」                    フレーベル館から出版されている「かしの木」 からヒントを得て、四歳児の竹組の秋の保育プログラムが展開されています。 一冊の絵本から、子どもたちと先生の「夢」が広がります。こうした保育テーマに沿って、竹組さんは、クラス単位の保育から、お友だちの輪が重なって、チーム保育の編成に移行しています。                         秋の日差しを浴びて子どもたちの夢は、広がっていきます。 赤や黄色に色づいた葉っぱ、竹で編んだ手作りのお盆にいっぱいに盛られたドングリ、松ボックリ、鎌ヶ谷の植木造園で探してきたでんでん虫のカップル、出産間近のカマキリ夫婦、熟した甘柿と真っ赤なカラスウリ・・・・                                         五歳児、年長組の緑の館のデッキには、秋があちこちに広がっています。手賀の丘の森の「お泊まり保育」で制作した造形作品も加わって年長松組は、秋いっぱいのギャラリーです。                               三歳児、年少組は、お話の世界から飛び出したファンタジックな世界を楽しんでいます。                 玄関前の花組コーナーでは、子どもたちの作品で飾られたテントのお店屋さん、落ち葉の温泉もあって、色とりどりの落ち葉のお金を持ったお客さんでにぎわいます。                                      白樺の木陰では、イスとベンチが並べられ、”ドングリコロコロ”のミニ・コンサートがひらかれています。        10月から11月は、夏の暑さで萌えた自然の木々も、葉を落とし、冬の厳しさに向けて、ゆったりと命を労る冬支度です。自然に近い位置で生活する子どもたちも育ちは、目には見えませんが、身体の内面で風船のように育ちます。                                               秋は、子どもの心が、育つ季節です。この時期の幼稚園は、子どもたちが、やわらかな陽を浴び、友だちと戯れ、自然の薫を満喫できる牧場公園です。激しいレースで全力を尽くした競走馬が、調教から解放されて、牧場でゆったりと戯れる姿ににています。

11月は、遙か南の国を目指して、身体を休める渡り鳥のように、子どもたちは、翼を休め、次の飛躍に備える月です。

                                                          幼児教育の父、フレーベルは、                                         「さあ わたしたちの 子どもらに いきようではないか」                                   フレーベルは、子どもが、自然の中で、天真爛漫にあそぶことで、子どもが学んでいく力の大切さを提唱します。

    「自らの足は、 神の地なる自然の中に 根をおろし、                                      その頭は 天にとどき、直感を持て天を読み、                                     その心は 天と地の両方を、一つにする。

 秋は、自然と同じ位置で生活する乳幼児が、身支度をする季節。そして自然に感謝して、自然に身を託する季節です。

   子どもは、身の回りの自然から学びます。                                     子どもは、肌で、感じたことを心にしみ込ませて、 ぬくもりとして自分の身体に染込ませて育ちます。            風に舞っておちる秋の葉にも                                            木立を縫って吹く風の気配にも                                           絵本を読んでくれるお母さんの声にも                                       温かいぬくもりを感じ、心を育てていきます。

                      

                       絵本との出会い

                                                        絵本との出会い このぬくもりを求める秋のこの時期、すてきな絵本との出会いがあると、子どもはさらに育ちます。                                                    お母さんが、絵本を読み聞かせてくれる時、子どもはお母さんのぬくもりを幸せとして感じているのでしょうね。ですから、物語の内容より、お母さんの声、お母さんの優しさを子どもは求め、心に染込ませて育つのでしょうね。

わたしたちは、ともすると、子どもに絵本を読み聞かせながら、つい「そらごらんなさい、こんなことはわるいことなのよ、わかった。」と教育の仮面をかぶって、声を強めがちですね。この時期の子どもは、教育よりもぬくもりを感じて育つと私は考えています。                                                 感性が育つ秋、良い絵本との出会いを探ってみませんか。

秋はお話の世界です。お話の世界で最も大切なことは、 子どもの心が、お話の花園に、ひらひらと舞う蝶のような楽しさが大切です。                                                     秋は、絵本の読み聞かせの季節です。                                        どんな絵本がよいのでしょうか。もちろん、その子の年齢、環境によって異なります。                  あえて、絵本を選ぶポイントを挙げれば、私は、幼児に与える絵本は、子どもが、お話の中に溶け込んで、お話の中の世界に自分が登場して、活躍できる絵本を薦めます。                                    特に気ぜわしい世の中だけに、子どもの心を夢世界に誘ってくれる絵本に出会えたらすてきですね。            日頃、せかせかとした生活に慣れてしまうと、ゆったりと目的のない時間がとれると、戸惑ったりすることがありませんか。でも、この戸惑いがたいせつなのでしょう。

「形で見えない、お金で買えない幸せ」とは? 「心のゆとり」と私は答えます。                                         私の経験からすると、四人の子育てをしていた時期が、子どもと接する心のゆとりがありませんでした。子育てで追われる時期は、仕事に追われる時期だけに、それだけに、子どもは、本能的に両親との心のふれあいをもとめているのでしょうね。  子どもにとっては、お父さんお母さんと一緒に手をつないで、のんびりと、散策できることが幸せで、うれしい。      お父さんがお母さんが読み聞かせてくれるお話は、目を輝かし、耳を傾けます。特にお父さんの話は、でたらめで、めちゃめちゃであっても、喜んで聞いてくれます。

私は、母子家庭で育ちましたが、父親がいないことは、さほど気になりませんでした。しかし、目に見えない「何か」が、欠けてているように感じたことがあります。その「何か」は、幼児期から九歳の頃の年齢に父親から刷り込まれる「生きる力の隠し味」だったかもしれません。幸い、母親の豊かな「ぬくもり」が、味わえなかった父親の「隠し味」を凌いでくれました。夫婦は、血が繋がっていないから、何らかの理由で離婚することはありえます。しかし、親子は、温かい命の血のつながりがあります。このぬくもりは、秋のようなぬくもりです。

木枯らしと共に街が走り出す季節になりました。テンポの速い時代だからこそ、時間に逆らって、時には時間を止めて、子どもの視座にたって、ゆったりと「心のぬくもりをかみ締める時間」をとっていただくと子どもは幸せです。